ヘッドマウントデイスプレイ
視点が変わると見え方も変わります。
例えば、ジェットコースターに乗っている人の頭にカメラを取り付けてみるとジェットコースターのライブ感が出てとても怖いと思います。まるで自分がジェットコースターに乗っているような錯覚を覚えます。ジェットコースターの下から見ていてもなにも感じませんが。
また、北海道の旭山動物園では従来の動物園と異なり動物の展示の仕方を「動物をオリに入れて見せる」ではなく「行動展示」にしています。
トラやライオンのオリでは、真下にある見学スペースから動物の息づかいを感じることが出来るし
ペンギン館では水槽に水中トンネルが設営され、飛ぶように泳ぐペンギンが見られます。
私どもの診療室でもこのようなことが起きています。
ヘッドマウントディスプレイを患者さまに装着して頂いて、私がマイクロスコープで患者さまの歯を見ている治療中のライブ映像を御自身でご覧になって頂いています。
「すごいですね。貴重な映像を有難うございます。」と仰る方がほとんどです。
こんなシステムが出来て患者さんへの説明も簡単になります。
今まではいくら口頭でお話しても解りにくかったことが私が実際に手を動かしながら
説明すると患者さんの理解は相当なものになるということです。
患者さんの耳元で今なにが起こっているのかを説明しながら治療をしています。
今までの歯科の弱点は細かいことの連続である歯科医療について術者が患者さんに説明する
システムを持たなかったことです。
例えていうとお米に字を書くような細かい作業の連続である歯科の治療を患者さんにいくら
口頭で説明しても無理でしょう。
昨日は歯がしみて痛いという患者さんがいらっしゃいまして、マイクロスコープで観察しながら
術者と患者さんが同じ画像を見ながら歯の中の破折線(歯にヒビが入っている)を
観察しました。患者さんには良く解っていただけたと思います。肉眼では不可能なことができるのです。
もうひとつ患者さんに理解していただきたいことがあるのですが
このような顕微鏡歯科を毎日実践するのは相当な努力と覚悟がいることです。
患者さんがご覧になっているのでごまかしはききません。
そして診療時間が通常行われている4倍以上かかります。20倍の倍率で見ているので20倍かもしれません。
こんなに時間がかかるのです。手が遅いのではなく必死でやっています。
これが歯科の本当の姿なのです。裸眼では無理なのです。