情報不足が生む有害なクラウン
クラウン、入れ歯をつくるのは歯科技工士
被せる治療(クラウン)は下手なものをつくれば、治すどころかかえって健康なところまで悪くしてしまいます。
なぜ、しばしば有害なクラウンやブリッジが口の中に入るのでしょうか?その理由は歯科技工士に渡す石膏模型の情報不足にあると思っています。クラウンや入れ歯をつくるのは実は歯科医ではなく、歯科技工士という専門職です。
前歯のクラウンや総入れ歯の治療では、実際に制作にあたる歯科技工士が、直接患者さんと顔を合わせて口の中の状態や患者さんの顔つき、話し方を知ることが好ましいです。
このような治療では、仕上がりの自然さや顔立ちとの調和、若々しさの回復が患者さんの満足を得るための重要な要素だからです。
歯科技工士は普段、患者さんの口の型から作った石膏模型上で作業します。
石膏模型を患者さんの口の代わりにして、クラウンや入れ歯を作るのです。
このため、何より大切なの情報は歯の型です。クラウンや入れ歯の治療では、歯科医がするのは歯肉や神経の治療を別にすれば、歯を削り、歯の型をとり、かみ合わせの状態を型にとるだけです。あとはすべて歯科技工士が制作し、歯科医がセットするのです。 ですから、歯科技工士に伝える情報が不正確であれば、有害なものができてしまいます。
正確で明確な型どりが不可欠
たとえば、口の中に十分に調和したクラウンをつくるには、まず歯ぐきの健康回復をしっかりして、かぶせるために歯を削ります。
このとき、一番大切なことは、削ったところと削っていないところとの境目の線が、きれいにはっきりとしていることです。削り終わったらプラスティックで仮の歯をつくってかぶせます。
これは、本物ができるまでの仮の歯ですが、最終的に、患者さんの口の中に入るクラウンの歯肉との調和と清掃のしやすさ、となりの歯との調和、かみ合わせ、前歯の場合には、顔型との調和などをチェックし修正するためのテスト版なのです。
次に削った歯の型をとります。
クラウンの場合には、この型どりが出来、不出来を左右するキーポイントです。コストが安い材料を使う人がいますが、これはお勧めしません。精度の高い高価な印象材(型を取る材料)を使うべきです。
歯と歯ぐきの間をしっかり露出させて、削ったところと削っていないところの境目の線を正確に型にとります。
次のビデオでは歯肉圧排をして歯と歯肉の間の溝を表現しています。
- 歯肉の健康回復
- 削ったところの境目のきれいな型
- 仮の歯でテスト
このようにして初めて、見た目もよく、清掃しやすく、しかも歯肉に害のないクラウンがつくれます。
右(下)の写真は形成限界が正しく、明瞭に印象された石膏模型です。
みなさんのお口の中に入っているクラウンは大丈夫ですか?