前回のタイでご開業の久米先生のコラムで紹介されていたトラストデンタルの及川先生のホームページにたどりつきました。アメリカの歯科大学を卒業されてアメリカの歯科医師国家試験に合格され日本で開業されている歯科医師です。
私は欧米の専門医の先生に研修会を通じてこのような教育の違いは聞いていましたがあらためて読んでみると、日本を悪く言っているようで気分的には良くないでしょうが正論だと思います。
及川先生のページから引用します。
>>アメリカでは出来るだけ神経を抜かないように努力する。虫歯が大きくても、最大の努力をして神経を残すようにする。これは歯のためにも、財布のためにも良いことだ。
ところが、日本では、十分な理由がなくても神経を簡単にとってしまう。神経を取ってしまうと、歯はとたんにもろくなる。割れたり折れたりしやすいので、神経を取ると同時に被せものにする。被せものは磨きにくい場所が出てくるので、また虫歯になりやすくなる。虫歯が出来ても神経がないので気がつかない。見つけたときには虫歯がかなり大きくなっているし、すでに被せものをしているので、のこっている歯質は少ない。仕方なく、金属の補強を入れる。これも歯を少し削らないと作れない。そんなことを何度かくりかえしているうちに10年ほどで歯が割れてしまって、抜くはめになる。
結局、初期の虫歯治療だけで済ませられたはずの歯を10年足らずで失ってしまう。この間の費用、労力、時間の無駄は初期の虫歯治療にくらべると、かなりのものになるのだ。ほんの些細と思われる診断の違いが大きな結果の違いを生んでしまう。
では、どうしてこのような診断の違いが生まれるのか。
まずそれは、教育だ。日本の歯学部では、神経を抜くことがどれだけ歯の寿命を縮めるかということが真剣に教えられていない。「便宜抜随」などという言葉が普通に使われている。
「その時点では神経には何らの問題もないが、あとで痛くなったら困るので」、あるいは「歯を削る量が多いので神経を露出させてしまうので」、先に抜いておこうということだ。まれにそのようなことが必要な場合があることは認めるが、私の印象では、日本ではかなりの高い頻度で行われていると思う。
「神経を抜いたら、そのあと必ず被せものをすることができるので、自費の収入につながるからいい」とでも思っているのだろうか。そうでないことを期待するが。すべての歯科医が金儲けを優先しているわけではないし、そんなこと考えずに真剣に取り組んでいる歯科医がほとんどだ。
しかし、どんな努力をしてでも神経を抜かないようにするという意識は、アメリカに比べるとかなり低い。知らず知らずのうちに、神経は抜いてもあまり問題がないかのごとき常識が通用する社会になってしまった。このちょっとした認識の差が、医療費の部分でも大きく跳ね返ってきていると私は思う。
これは、もしかすると保険の診療費が安いので、患者の側もあまり大きなことであると考えていないことにも関係しているかもしれない。
もし、神経を抜くのに10万円かかるといわれたら、最大限の努力をして抜かないようにしてもらうのではないか。<<
日本歯周病学会歯周病専門医 吉川英樹 拝