最近はマイクロスコープを使った自費の根管治療についての質問が多くありますのでご紹介致します。
昨日、初診で見えた患者さんは「今、保険で根管治療を受けているのだけれど、職場の同僚の方から根管治療は自由診療で受けたほうが良いとアドバイスを受けこちらに来ました」という相談を頂きました。
こちらの患者さんのお話からインターネットで検索して色々な情報を捜していることが解りました。従来から行われている保険の根管治療では成功率が低く、マイクロスコープを使用した米国式根管治療を行うと成功率が上がり予後良好だということも既にご存知でした。来院前に私たちのホームページをご覧になっていて、このような方はとてもやりやすいです。ある程度、頭の中が整理されているので無用な説明がいらなくなるし、質問も積極的にして下さいます。早速、お口の中を拝見して驚きました。穴の開いた歯に詰められていたのはストッピングというゴムのようなもので、器具でほじると簡単に除去出来て中から綿が出て来ました。
このようなストッピングで蓋をするということはいけません。ストッピングは封鎖性が悪いので、根管治療を日を分けて複数回行う場合、唾液が歯の中に侵入して歯の内部が細菌の巣になってしまいます。そもそも根管治療の目的は歯の中を消毒して無菌的にすることです。いくら消毒薬を入れても唾液が中に侵入したらいけません。
保険診療では時間がかけられないので簡単に除去できるストッピングを今だに使っているのだと推測しました。
正しい治療をするには一回の予約につき1時間〜1時間半の時間が必要と言われているし、現にアメリカの歯内療法専門医はこれが常識です。
しかし、日本の保険の根管治療は1時間半の治療も20分の治療も費用は同じ算定なので、時間がかけられないのです。
その結果、歯の中に細菌を入れてしまいます。
私は患者さんに根管治療のやり方、方法については選んでもらってから治療を始めます。
結局、根管治療を行なう場合次のような選択肢しかないのです。
1.患者さんに事実を話さずに保険の治療をする。(結果が悪いと知りながらコンセプトを守らない治療をする)
2.患者さんに事実を話してできる範囲のことをする。(結果が悪いと知りながらコンセプトを守らない治療をする)
3.赤字のままでコンセプトを守った治療を行なう。
4.自費でコンセプトを守った治療を行なう。
5.歯内療法をしない(専門医に送る、抜歯を選択)
患者さんに情報を与えて、どれを選択するかは患者さんが選ぶのです。
日本歯周病学会歯周病専門医 吉川英樹 拝