日本の歯科の致命的な欠陥構造
いろいろな患者さんとお話ししていて、かなり多くの方が誤解されておられるようです。
それは、ご自身が今までに受けていた治療は適切なものであったという認識・考え方です。
歯科の治療はどこの医院でも、毎日やり直しの治療ばかりだと想像します。
私たちの医院でも過去の治療のやり直しばかりが多く、前医が行った治療が不適切であったことの証であります。
くれぐれも誤解をしないようにお願いしたいのですが、私は前医を批判するつもりはありません。
そのように前医がしなければならない理由があったから治療は失敗しているのです。
その致命的な欠陥構造とは『出来高払いの保険診療』です。
出来高払いとは治療の質には関係なく治療行為の数で医療費が支払われる仕組みです。
もし、皆様が歯科医師で医院の利益を多くしたいと思ったらどのように歯科医療を行って行くでしょうか?
ただし、ここではすべて保険診療で診療を行うという前提でのお話しです。
保険診療は治療の出来、不出来は誰も監督する人はいないので解りません。
質は問われないのであれば数・患者さんの人数を多くすれば、それだけ収入が増えるということは誰でも考えることです。そのため、歯科医師は多くの患者さんを診療しようとします。
利益を得ようと思ったら5人より、50人患者さんを治療しようとするでしょう。
この50人患者さんを診療すること自体が先進国では考えられないことで色々な治療の失敗を招きます。
内科等の医科では、患者さんの自然治癒力を期待して治療を行うので、医者が直接、手を動かさなくてもよいのですが、歯科は自然治癒力が期待出来ないので歯科医は手仕事を行うことになります。
この手仕事である歯科治療はものすごく細かい繊細な仕事で、脳外科の手術に匹敵すると言われていて、良い治療を行おうとすれば一日に診療できる患者さんの数は数人です。多く見積もっても十人は無理かと私は思います。
『虫歯の取り残し』これは多く見られることで虫歯を全部除去するには、一時間位かかるのですが15分で終わらそうとすれば当然です。
『詰め物・被せものの適合が悪い』歯科の治療は永遠に患者さんのお口に残る人口臓器です。歯と人工物の隙間が大きいとそこから体内に細菌が侵入して多くの病気を引き起こします。ぴったりと隙間のないキャップをして体内に細菌が侵入することがないようにするのが私たちの仕事、任務です。
どんなに精密に作ろうが、精度が悪くても診療報酬が同じであれば誰が努力をして良い治療をするでしょうか?
『親知らずを抜歯しない』何故抜歯しないのかという理由は患者さんが嫌がることは行わないことが開業医としての成功につながるのかと思います。
誰でも外科処置は望みません。
しかし、歯一本の値段は百万円とも言われているので、『親知らずを抜歯しない』ということは手前の歯を失うことになり患者利益を損なう結果になります。
『根管治療の成功率が日本では低い』日本では根管治療の成功率が3割から5割と言われていて、この失敗の多い理由は根管治療の保険診療の低評価だと言われています。
詳しくは根管治療のコンテンツをご覧ください。
『滅菌のレベルが低い』ヨーロッパ基準のクラスBの普及率が数%と言われています。
『予防歯科が行われていない』
『歯周病治療が正しく行われていない』
『マイクロスコープが普及しない』マイクロスコープを使えば治療の成功率は格段に向上するはずですが日本では5%程度しか普及していません。
その理由はマイクロスコープを使うと治療時間が一時間以上かかり、医院は赤字になってしまうからでしょう。
色々、書きましたがこれは歯科医師が悪いのではないのです。制度自体が現代には不適切なのです。
これでは、正しい診療自体が行われなくなってしまいます。
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