先日このような患者さんが見えました。
ある歯科医院へ定期健診のために行ったところ、レントゲンを撮って、歯周組織検査をして、その日の予約時間は終わりで歯石除去をしてもらえなかったことがとても不満で、私たちの「医院に定期健診のために来ました」とおっしゃっていました。
この患者さんにとって定期健診とは受け身のもので、歯科医師から何か治療を受けること、歯石を除去することが定期健診の目的であると思っていたようです。このような方はとても多く見られます。この方は今までこのようにしていたので解らないことはありませんが、歯肉に炎症が残っていました。
歯肉に炎症が残っている状態で定期健診に移行することは私たちの医院ではありえません。歯周病が残っている状態では健診ではなく治療が必要だからです。
私たちが定期健診に移行できる基準は次のようなものです。
・プロービング時の出血がないこと(歯周病が完治していること)
・患者さんが歯磨きの仕方、フロス・歯間ブラシの仕方をマスターしていること(家庭での療法を理解し実践できること)
・虫歯が一本もないこと(虫歯があると感染源になります)
・かみ合わせ・咬合が安定していること
もう一つ皆様に理解して頂きたいのは歯石はできるだけ取らないようにすることが大切です。その理由は歯石を除去することは歯と歯周組織にダメージを与えるからです。車を固いブラシで洗車すれば塗装は削れます。次のビデオをご覧下さい。超音波スケーラーによって歯が削られています。
私たちの医院では定期健診の目的はつぎのように考えています。
1 定期健診の間の家庭療法を評価することが一番の目的です。その期間、患者さんが適切に口腔清掃が行われていたかを評価します。プロービング時の出血である程度、口腔清掃が正しかったかが評価出来ます。また、通常行っているベストの歯磨きを健診の前に行って頂くことにより、日常の清掃状態を評価します。
2 定期健診では何も問題なしが目標ですが、何か問題があることも多々あります。問題があったことを次の定期健診までに改善することが目標になります。
3 このように定期健診を繰り返すことにより、ご自分の歯・口をご自分で守る知識を持つようになり、ご自分の体はご自分で守れるようになります。
アクセルソン先生の30年に渡る予防歯科歯科の研究にもこのように書いてあったと思います。
日本歯周病学会歯周病専門医 吉川 英樹 記
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