「虫歯を削って銀歯や白い詰め物をしたのに、冷たいものにしみるので見て下さい」という問い合わせが多々あります。金属の熱伝導があるので、そのようなこともあるのでしょうが実は他にも興味深い報告があります。

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上の写真をご覧下さい。虫歯を持っている歯の病理切片です。(猪越重久先生著 1からわかるコンポジットレジン修復からコピー)

この写真は咬合面の虫歯に健全象牙質に及ぶ窩洞(頬側面)を形成し、色素液に浸漬しました。咬合面のう窩から侵入した色素はすべて透明象牙質で止まっていますが、健全象牙質まで形成した頬側面の窩洞では、色素が窩底から象牙細管を伝わり歯髄腔まで侵入しています。(教科書から引用)

写真の下に見える空洞が歯髄腔と言って神経、血管が存在していたところです。健康な歯質を削ると刺激が歯髄腔にまで及ぶということの証拠です。左の矢印ではが歯髄腔まで赤い色素が到達しているが、右の矢印の部分では透明層という部分で赤い色素は止まっている。健康な歯、象牙質を削ると後でしみるようになる証拠写真のようなものです。

健全象牙質は細かくみると、象牙細管という細い管状になっています。象牙細管には、象牙芽細胞突起及び細胞内液が含まれており、その象牙細管は歯髄からエナメル象牙境へ走向していると言われています。

従いまして、健康な歯を削ることによって、健全象牙質が露出すると、象牙牙細胞突起は損傷を受け、象牙細管を介して歯髄と口腔が直接交通する状態となります。

この写真に示されている事実によると、間接法と言って歯型を採り歯科技工士が詰め物・インレーを作製する場合、詰め物が脱落しないような保持形態(インレーという詰め物が脱落しない形態)を付与しなければならないので虫歯の部分以外のところも大きく削らなければなりません。そうすると、この写真のように刺激が歯髄に達してしまいます。

つまり、健康な歯を削るということは体の中を外の世界に露出させることを意味しています。
このような事実から詰め物をする場合はなるべく小さく削り、健全な象牙質は除去せずに、コンポジットレジンによる修復が望まれます。

日本歯周病学会歯周病専門医 吉川英樹 拝